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プラス思考の技術

第1回,「落ち込むためのエネルギー」という話でこの連載をスタートした。マイナスエネルギーの供給源を絶つというのがその眼目であった。
それは落ち込まないための思考方法,もっというと「思考技術」の一例として提示してみたものである。私は,人生にとって,思考技術はきわめて重要なものだと考えている。
真心,思いやり,やさしさ,正直さ等々について,それのかなりの部分が「技術」にかかっていると言ったら,違和感を覚える人は多いのかもしれない。『そういったものは,むしろ生まれながらの資質,本質,性格などに関わるもので,範疇的にいえば「技術」とは対極の場所にあり,ある意味では神聖なものですらある。小手先のテクニックなどとは無縁のものであるはずだ』というように……。
しかし,あることがらが範疇的にどこに属するかということと,それを認識し,確保し,育て,その本領を発揮するために技術が必要か否かということとは,別の問題である。人がよりよく生きるために思考技術の習得は必要不可欠であり,それを探求することには重要な意味があるものと考えられる。
最近,プラス思考という言葉が頻繁に用いられる。物事を前向きに,いい方向にとらえ,くよくよせずに,暗くならずに生きようという考え方である。「プラス思考をしよう」,と説く人が多い。おそらくそれは正当だろう。
ただ問題は,どういう意味合いでそう言われているかということである。それが単に「心がけ」として言われているだけだとすれば,人生においてそれが果たす役割は,かなり限定的なものにとどまるように思われる。というのは,単純にプラス思考がいいと標榜してみても,それは,そういう心構えさえあれば簡単に実現するというものではないからである。
たとえば,人生の負の局面に遭遇したとき,プラス思考がいいと解っていても,なかなかそうはできないものである。人は,悩みにぶつかったり鬱の気分に捉えられたりしたときに,知らず知らずにマイナスの思考を重ねてしまう。そんなときに,「プラス思考に変えなくては」などと標語的に気分の転換を図ったとしても,その試みだけで,思考の「記号」がたちまちスイッチしてしまうというものではない。それどころか,悩みの原因によっては,「プラス思考をしよう」と考えること自体が不謹慎で不適切に思えてしまったりすることもある。
そういった負の局面においてばかりでなく,日常的にも,プラス思考を妨害する誘因は存在する。比ゆ的にいえば,マイナス思考への落とし穴は至る所に口を開けている。
そのことを解明し,注意深く対処するようにしておかないと,せっかくいいと思っているプラス思考を,我が物とできないままに終わるおそれがある。
プラス思考をするために日ごろどのようなことに気をつけたらいいか,そのための思考技術をどうすれば習得できるかということについて,これから少し考え続けてみたいと思っている。